レコード盤的・やど批評 第2回「おたる宏楽園」(北海道)2017年7月訪問

【A面】(基本情報・設備など)

北海道・小樽と言えば、ノスタルジックな港町。

歴史を刻む運河は、この街のシンボルでもある。

北の大地にありながら、特に女性の方たちには、スイーツが美味しいスポットとして認知されているに違いない。

小樽市街からクルマで数分の距離に朝里川温泉というエリアがあるが、その中でも広大な日本庭園が自慢の温泉旅館が「おたる宏楽園」。

玄関に入ると、そこで靴を脱いで、スリッパを履かずそのまま歩く。

ロビーも廊下も、ほとんどが畳敷きなのだ。

これが気持ちいい。

我が家に帰ってきたような感覚にもなる。

露天風呂付きの大浴場も2ヶ所もあった。

専用の露天風呂を備える客室も豊富にある。

さらに湯舟が広い貸切風呂も備える。

料理も評判がいい。

北海道らしい、海の幸、山の幸の新鮮な食材を使い、上品な献立でゲストを悦ばせてくれる。

 

【B面】(コンセプト・その他)

この宿の一番特徴的なのは、客室35室の規模ながら、露天風呂付きの客室が28室もあるという事。

この点でコンセプトがある程度、理解できる。

大人数の旅行より、個人旅行にシフトしているようだ。

露天風呂付きの客室の料金は、一人2万円台半ばからとなるが、その中身というか、滞在の充実感を考えると、リーズナブルな料金体系と言えるだろう。

敷居の高さを感じさせない高級旅館というか、ゆったり感が館内を漂う。

この心地いい雰囲気は、どこから来るのか?

北海道の開放的な空気がそうさせるのか?

それもあるだろうが、この宿は、この規模にして、家庭的な温かさを感じさせてくれるのだ。

それは、米山社長と女将さんご夫妻のお人柄によるものだろうと私は思う。

仲睦まじいご夫婦は、宿がもちろん好きで、従業員を家族のように接し、そしてお客さんが気持ちよく過ごせるように常に心配りを怠らない。

多分、見えないところで色々と準備をしているのだろうな・・・と推測してしまう。

何事も、見えないところでの努力が、結果的に報われる。

そんなことを思い起こさせてくる、気持ちのいい宿だった。

ウラを見せる戦略

最近、旅館・ホテルのホームページ(HP)を色々と見ると、数年前を比べたらホントに(ごく一部を除いて)洗練されているなあと感じる。

写真もきれいだし、デザイン、レイアウトも考えられているのが増えてきた。

それも、ウチの会社のような、専門の会社にHP制作を委託しているから。

 

でも、きれいばっかりだと、ホントの姿が見えないというか、素顔を判別できない厚化粧の女性(すいません)に似たり。

世は、共感を求めるSNS全盛の時代。

絵はきれいじゃなくても、ちょっとした裏側を見せるのもいいかもしれない。

 

例えば、源泉100%かけ流しの宿の場合。

温泉はすべて、人間にとって適温で湧出するものではないという、当たり前の情報を伝える。

適温にするには、気温を考えながら、湯舟に注ぐ源泉の湯量を調整している湯守の姿を動画で公開するのはどうだろう。

循環ろ過式のコンピュータ管理で湯温調節している宿とは違うという差別化をアピールできる。

 

食材にこだわっている宿の場合。

仕入れ先や、提携している生産農家さんとのインタビュー記事を載せるとか。

これだけ苦労して、手間暇かけて作っている食材を使っているというアピールができる。

 

現代はネットの普及により、情報過多とも言われているが、内情は薄っぺらな情報ばかり。

きちんと現地に足を運んで取材しているものなど、本当に少ない。

裏付けのない情報を記事にして、まとめサイトを運営する会社が告発された報道は皆さんご覧になっただろう。

 

ドキュメンタリー番組の如く、提供側の人間味あふれる姿や、取り組み方を一部見せる事は、消費者に共感を呼ぶ。

いくら施設が充実していても、運営している人間が手を抜いていれば、それは先が知れている。

 

“共感”が人を呼ぶ。

それは、昔も今も変わらない。

温泉は源泉かけ流しが一番か?

このテーマは、温泉評論家、ライターさんなど、温泉に関わる仕事をしている人たちによって、微妙に考え方が違ってくる。

源泉かけ流しでなければ、温泉ではない・・・と主張する人もいれば、湯温が高温だったり、湯量が少なかったり、または大人数の人たちが利用する湯舟であれば、塩素消毒付きの循環ろ過も必要だとする人もいる。

 

ちなみに、源泉かけ流しとは、一般的に解説すれば、湯舟に温泉が注がれ、湯舟から温泉が溢れ出る、いわゆるオーバーフローする温泉の事。

常に新鮮な温泉が注がれているという状況。

例外として、オーバーフローしなくても、サイフォン方式というか、湯舟からパイプを横に出して、そこから湯を出す方式の湯舟もある。

 

そもそも、温泉は源泉100%だからこそ温泉であり、それ以外は認めないという考えは、恐ろしい事に日本国内ではおよそ90%以上の温泉(施設)というものが無くなってしまう。

源泉かけ流し至上主義と言われる人たちは、一般の人たちと比べて、温泉地に近かったり、そこまで行く時間とお金がある人たちが多い。

車中泊をしてまでも、温泉に行く人が、この源泉かけ流し至上主義の人が多い気がする。

 

では、源泉かけ流しは、衛生的か?と言われれば、疑問と言わざるを得ない。

利用者それぞれが、入浴前に、かけ湯はもちろん、石けんでカラダを洗ってから入るという前提が必要だからだ。

短時間で湯舟が新鮮な温泉に入れ替わるような、湯量豊富のドバドバかけ流しばかりが、源泉かけ流し風呂ではない。

湯量チョロチョロの、源泉かけ流し湯舟も多く存在するのが実情。

 

私なりの結論を言えば、療養・治療目的であれば、源泉100%かけ流しの温泉を探し、観光目的であれば、景色やロケーション中心で(源泉100%にこだわらず)温泉を探せばいいだけの話。

1日2日では、源泉100%かけ流しの効力は高が知れている。

いわゆる湯治は、ある程度の日数が必要になってくる。

1泊2日のストレス解消目的旅行であれば、なにも源泉100%にこだわる必要はないわけで。

料理目的に温泉地に行く人も多いはずだし。

 

だからこそ、温泉施設には、誰にでもわかる温泉(源泉)の利用状況をホームページ上で開示して欲しい。

温泉の事があまり詳しく表記していない宿に、電話で質問すると、スタッフから「あんた何が目的?」とか凄まれることもあった。

ただ、こっちは単に温泉のことを知りたいだけなのに・・・。

ホームページ上で、温泉の事を詳しく表記しなければならないという法律がないから、こうなっているのか?

そういえば、販売料金を表示しないガソリンスタンドに似ているなあ。