ウラを見せる戦略

最近、旅館・ホテルのホームページ(HP)を色々と見ると、数年前を比べたらホントに(ごく一部を除いて)洗練されているなあと感じる。

写真もきれいだし、デザイン、レイアウトも考えられているのが増えてきた。

それも、ウチの会社のような、専門の会社にHP制作を委託しているから。

 

でも、きれいばっかりだと、ホントの姿が見えないというか、素顔を判別できない厚化粧の女性(すいません)に似たり。

世は、共感を求めるSNS全盛の時代。

絵はきれいじゃなくても、ちょっとした裏側を見せるのもいいかもしれない。

 

例えば、源泉100%かけ流しの宿の場合。

温泉はすべて、人間にとって適温で湧出するものではないという、当たり前の情報を伝える。

適温にするには、気温を考えながら、湯舟に注ぐ源泉の湯量を調整している湯守の姿を動画で公開するのはどうだろう。

循環ろ過式のコンピュータ管理で湯温調節している宿とは違うという差別化をアピールできる。

 

食材にこだわっている宿の場合。

仕入れ先や、提携している生産農家さんとのインタビュー記事を載せるとか。

これだけ苦労して、手間暇かけて作っている食材を使っているというアピールができる。

 

現代はネットの普及により、情報過多とも言われているが、内情は薄っぺらな情報ばかり。

きちんと現地に足を運んで取材しているものなど、本当に少ない。

裏付けのない情報を記事にして、まとめサイトを運営する会社が告発された報道は皆さんご覧になっただろう。

 

ドキュメンタリー番組の如く、提供側の人間味あふれる姿や、取り組み方を一部見せる事は、消費者に共感を呼ぶ。

いくら施設が充実していても、運営している人間が手を抜いていれば、それは先が知れている。

 

“共感”が人を呼ぶ。

それは、昔も今も変わらない。

有名観光地を持たない温泉宿の未来

相変わらず、京都を代表とする有名観光地のインバウンドの吸引力は凄い。

ニッポンに初めて来る外国人旅行客にとっては、やはり定番どころの有名観光地をおさえたいのは、心情的によく分かる。

問題は、二度目以降の訪日旅行の場合。

次は、もう少しディープなニッポンを見たい、もっと田舎のリアルな生活風景を体感したい・・・と思ってくれたら・・・・・それは喜ばしいことである。

そこに、有名観光地を持たない温泉宿の未来があるからだ。

 

温泉は、日本人の国内旅行におけるド定番。

何かの記念日とか、ちょっとした休暇とかに温泉旅行は欠かせない。

年齢を重ねた人たちには、カラダのメンテナンスのための湯治という文化もある。

まさに、ニッポンのディープで、リアルな生活風景がそこに存在する。

 

業界でインバウンドのコンサルタントと名乗る人たちは、どちらかというと、メジャーなものの見方が大半だ。

業界誌や経済誌を読んでも、そういった無難な表現をする書き手が重宝される。

しかし、現実には、そういった記事や評論は、結果的に成功した事例を伝えているだけに過ぎない。

 

では、有名観光地が近くにない地域の温泉宿は、どうすれば生き残れるか・・・というテーマは、どちらかと言えば、マイナー的なマーケティングが必須で、例えれば、細かな処方箋が必要なのだ。

つまり、ホームページひとつとっても、大ざっぱな、どこの宿でも紹介しているやり方では、どこからも注目されず、埋没していく運命になることだ。

 

有名観光地を持っている宿の社長が、私に販促の相談をして、その答えとして、新しい提案をすると、このような返事が返ってくることが多い。

「それ、他のどこかでやっているの?」(他で成功例があるなら、やってみてもいいという意味)

 

有名観光地を持たないのに、繁盛している宿の社長は、大体がこう答える。

「それ、他のどこかでやっているの?」(他でやっていないなら、やってみてもいいという意味)

 

言い方は、同じでも、その意味は正反対なのは面白い。

つまり、有名観光地を持たない宿は、マイナーでもいいから、個性を前面に押し出し、キャラを立たせないと目立たないという事なのだ。

あまり集団から目立ちたくない、変わり者と呼ばれたくない日本人の性質からは難しいところだが、やはり商売、ビジネスともなると、目立たなくては、未来はないという事。

 

私は、幸運にも、そういったお宿さんとのお付き合いがほとんどだから、仕事が楽しい部分があるのは確か。

「変わり者」と呼ばれるのは、私にとって、最高の褒め言葉なのだ。

旅館スタッフ不足問題

私が全国を周っていると、宿の経営者から必ずと言っていいほど聞くのは、旅館スタッフが不足しているという悩み。
そして、その現象は、ここ最近さらに顕著になっている。
インバウンドが増え、観光業界は追い風になっているはずなのに・・・。
お客が来ないという悩みよりも、スタッフが不足しているという問題が増えているという事なのだ。

報道でもよく取り上げられている事だが、日本国内の、いわゆる少子高齢化が起因しているのは間違いない。
一部の業界を除いて、若い労働力が、必要な数だけ集まらないのだ。
ただでさえ、東京など大都市圏に人口が集中する中、温泉旅館がある地方には慢性的に労働力が不足していた。

日本文化の象徴と言われる旅館は、「おもてなし」を体験できる場所。
その「おもてなし」を求めに、国内だけでなく、世界中から人々が日本に訪れてきている。

ところが、当たり前だが「おもてなし」には、マンパワーが要る。
「人」がいてこその、サービス業だから、当たり前である。

人を集める手段として、給料を上げる手もあるが、それも限界にきている。
ある旅館では、客室数が25あるところ、人手不足のため、最大稼働客室数を約半分の13室にしているという。
予約が来ないわけではない。
受け入れるスタッフが足りないからだ。

最近、日曜日の夜、都内のあるファミレスに立ち寄った。
そこの従業員を見て、少し驚いた記憶がある。
大学生ぐらいの若いスタッフは見つからず、どうみても、70歳前後の男性従業員ばかりだった。
10年前には、見られなかった光景だ。
東京でもこうなのである。
あと10年経ったら、お店などのサービス業は、年配の従業員だらけになるのかもしれない。

昔ながらのサービスを提供する温泉旅館は、まさに岐路に立っている。
人材を集めるにはコストがかかる分、宿泊料金を上げざるを得ない。
逆に、ふとん敷きなど、お客様に自身でやってもらう代わりに、宿泊料金を安くするなどの割引プランも今後増えていく可能性は高い。

以前より、年配の女性の仲居さんが、地方の温泉旅館の代名詞だった。
これからは、いったんリタイアした中高年の男性を、無理のない勤務シフトで働いてもらうシステムも考えるべきだ。
例えば、介護が必要な高齢な親を持つ方であれば、いっしょに住み込みで働ける環境を提供する。
働く場所と、介護する場所が隣接していれば、安心なはずだ。
同じ悩みを持っている中高年同士のコミュニケーションも取れるし、ストレスも軽減される。
中高年スタッフは、給料よりも、働く環境を重要視すると聞いた事もある。
新たに働き手を集めるひとつの手段にもなるだろう。

同時に、ITをフル活用して、時間がかかる事務的な作業を極力減らすことも不可欠だ。
ネット予約が入った時点で、請求書領収書はもちろん、お客の好みがデータベース上で閲覧できて、下足箱に入れる靴の名札まで印刷できるシステムが必要だ。
日々進化するネット関連業務は、できるだけアウトソーシングすることも大事だろう。
貴重なマンパワーは、できるだけ「おもてなし」に費やすことが、これからの旅館経営には絶対に必要な気がする。