‘宿について思うこと’ カテゴリーのアーカイブ

有名観光地を持たない温泉宿の未来

2017 年 2 月 28 日 火曜日

相変わらず、京都を代表とする有名観光地のインバウンドの吸引力は凄い。

ニッポンに初めて来る外国人旅行客にとっては、やはり定番どころの有名観光地をおさえたいのは、心情的によく分かる。

問題は、二度目以降の訪日旅行の場合。

次は、もう少しディープなニッポンを見たい、もっと田舎のリアルな生活風景を体感したい・・・と思ってくれたら・・・・・それは喜ばしいことである。

そこに、有名観光地を持たない温泉宿の未来があるからだ。

 

温泉は、日本人の国内旅行におけるド定番。

何かの記念日とか、ちょっとした休暇とかに温泉旅行は欠かせない。

年齢を重ねた人たちには、カラダのメンテナンスのための湯治という文化もある。

まさに、ニッポンのディープで、リアルな生活風景がそこに存在する。

 

業界でインバウンドのコンサルタントと名乗る人たちは、どちらかというと、メジャーなものの見方が大半だ。

業界誌や経済誌を読んでも、そういった無難な表現をする書き手が重宝される。

しかし、現実には、そういった記事や評論は、結果的に成功した事例を伝えているだけに過ぎない。

 

では、有名観光地が近くにない地域の温泉宿は、どうすれば生き残れるか・・・というテーマは、どちらかと言えば、マイナー的なマーケティングが必須で、例えれば、細かな処方箋が必要なのだ。

つまり、ホームページひとつとっても、大ざっぱな、どこの宿でも紹介しているやり方では、どこからも注目されず、埋没していく運命になることだ。

 

有名観光地を持っている宿の社長が、私に販促の相談をして、その答えとして、新しい提案をすると、このような返事が返ってくることが多い。

「それ、他のどこかでやっているの?」(他で成功例があるなら、やってみてもいいという意味)

 

有名観光地を持たないのに、繁盛している宿の社長は、大体がこう答える。

「それ、他のどこかでやっているの?」(他でやっていないなら、やってみてもいいという意味)

 

言い方は、同じでも、その意味は正反対なのは面白い。

つまり、有名観光地を持たない宿は、マイナーでもいいから、個性を前面に押し出し、キャラを立たせないと目立たないという事なのだ。

あまり集団から目立ちたくない、変わり者と呼ばれたくない日本人の性質からは難しいところだが、やはり商売、ビジネスともなると、目立たなくては、未来はないという事。

 

私は、幸運にも、そういったお宿さんとのお付き合いがほとんどだから、仕事が楽しい部分があるのは確か。

「変わり者」と呼ばれるのは、私にとって、最高の褒め言葉なのだ。

旅館スタッフ不足問題

2016 年 10 月 31 日 月曜日

私が全国を周っていると、宿の経営者から必ずと言っていいほど聞くのは、旅館スタッフが不足しているという悩み。
そして、その現象は、ここ最近さらに顕著になっている。
インバウンドが増え、観光業界は追い風になっているはずなのに・・・。
お客が来ないという悩みよりも、スタッフが不足しているという問題が増えているという事なのだ。

報道でもよく取り上げられている事だが、日本国内の、いわゆる少子高齢化が起因しているのは間違いない。
一部の業界を除いて、若い労働力が、必要な数だけ集まらないのだ。
ただでさえ、東京など大都市圏に人口が集中する中、温泉旅館がある地方には慢性的に労働力が不足していた。

日本文化の象徴と言われる旅館は、「おもてなし」を体験できる場所。
その「おもてなし」を求めに、国内だけでなく、世界中から人々が日本に訪れてきている。

ところが、当たり前だが「おもてなし」には、マンパワーが要る。
「人」がいてこその、サービス業だから、当たり前である。

人を集める手段として、給料を上げる手もあるが、それも限界にきている。
ある旅館では、客室数が25あるところ、人手不足のため、最大稼働客室数を約半分の13室にしているという。
予約が来ないわけではない。
受け入れるスタッフが足りないからだ。

最近、日曜日の夜、都内のあるファミレスに立ち寄った。
そこの従業員を見て、少し驚いた記憶がある。
大学生ぐらいの若いスタッフは見つからず、どうみても、70歳前後の男性従業員ばかりだった。
10年前には、見られなかった光景だ。
東京でもこうなのである。
あと10年経ったら、お店などのサービス業は、年配の従業員だらけになるのかもしれない。

昔ながらのサービスを提供する温泉旅館は、まさに岐路に立っている。
人材を集めるにはコストがかかる分、宿泊料金を上げざるを得ない。
逆に、ふとん敷きなど、お客様に自身でやってもらう代わりに、宿泊料金を安くするなどの割引プランも今後増えていく可能性は高い。

以前より、年配の女性の仲居さんが、地方の温泉旅館の代名詞だった。
これからは、いったんリタイアした中高年の男性を、無理のない勤務シフトで働いてもらうシステムも考えるべきだ。
例えば、介護が必要な高齢な親を持つ方であれば、いっしょに住み込みで働ける環境を提供する。
働く場所と、介護する場所が隣接していれば、安心なはずだ。
同じ悩みを持っている中高年同士のコミュニケーションも取れるし、ストレスも軽減される。
中高年スタッフは、給料よりも、働く環境を重要視すると聞いた事もある。
新たに働き手を集めるひとつの手段にもなるだろう。

同時に、ITをフル活用して、時間がかかる事務的な作業を極力減らすことも不可欠だ。
ネット予約が入った時点で、請求書領収書はもちろん、お客の好みがデータベース上で閲覧できて、下足箱に入れる靴の名札まで印刷できるシステムが必要だ。
日々進化するネット関連業務は、できるだけアウトソーシングすることも大事だろう。
貴重なマンパワーは、できるだけ「おもてなし」に費やすことが、これからの旅館経営には絶対に必要な気がする。

旅館経営のパートナー

2016 年 9 月 30 日 金曜日

一般的に、日本の温泉旅館は家族経営が多い。
規模が大きい宿でも、いわゆる世襲制の同族経営がほとんどだ。
私の知る限りでも、多くの宿で世代交代がされた。
その理由のひとつとして、この10年で、宿の経営のノウハウは大きく変わったからに思える。
今や、当たり前となったネットの存在がそうさせた。
しかも、1年ごと、数か月ごとに新しいサービスが生み出され、それを宿経営にマッチングさせられるかどうかに、業績の向上がかかってくるような時代になった。
情報も、あらゆる方面から入るようになり、取捨選択が面倒になったのも事実。
そして、最近では、旅館もRYOKANと呼ばれるようになり、インバウンド需要が増加し、グローバル化は避けられない環境になりつつある。

そんな中、ニッポンの宿泊施設は、先行き不透明な経営のかじ取りを、コンサルタントという名のパートナーを欲しているようだ。
ところが、自分の宿に合うコンサルタントを探すのが、指南の業となっている。
簡単に済ませば、大手旅行会社出身とか、予約サイト出身とか、または老舗の旅館ホテル専門のコンサル会社に委託する手もある。

しかし、それでいいのだろうか?
いまや、ネットが当たり前のインフラの時代。
旅行会社出身とか予約サイト出身であれば、結局彼らは、今までの成功体験しか持ち合わせていない。
老舗のコンサル会社に至ってもそうだ。

顧客予備軍のニーズを、どれだけ汲み取れるかが、これからのコンサルタントに必要だと思う。
痛いところをつくと、業界出身のコンサルは、自分であまり旅行しない。
言い換えれば、自腹で旅行をしないのだ。
仕事で、地方を周れば、それは、知識はつくだろう。
しかし、顧客予備軍のマインドを、彼らは、どこまでリサーチしているのか?

極論を言えば、宿の経営者は、それなりの勉強と研究をすれば、コンサルなぞ雇わなくても、充分なのである。
でも、どうしても必要ならば、業界出身のコンサルはやめた方がいい。
横並びの金太郎飴みたいな、何の個性もない宿を目指すなら、それでもいいが。

セミナーで成功体験を話すコンサルよりも、その宿ごとにきちんと対策を練ってくれる・・・。
そして、常に情報を集め、トレンドを熟知し、新しいネットサービスを研究し、それを応用検証ができる存在が、旅館経営には必要になってくると思う。
いわば、病気になった時に、医者が個別に処方箋を書いてくれるが如く。
抽象論が得意なコンサルよりも、マーケティング能力があり、そしてドクター的なパートナーが、これから求められてくるような気がする。

宿泊施設の生き残り策

2016 年 1 月 31 日 日曜日

業界紙(誌)やネットの関連サイトを見ると、経営セミナー、Webセミナー、インバウンドセミナーなど、セミナー告知が多いな~と改めて思う。
ある旅館の経営者から聞いた。
「ここ数年、一通りセミナーを受講して、色々と改革している。でも、驚くほどの効果は上げていない。」とか、
「社員に受講させ、それを実施しているが、効果は長い目で待つ。」とか、
「数字などデータをまとめて、経営の“見える化”、課題の“見える化”は成功したが・・・」とか、様々だ。

今は、インバウンド特需を享受している宿泊施設は多いが、こればっかり頼っているのも、心もとない。
昨年、日本一の集客力を誇った箱根温泉郷でも、大涌谷の噴火があって観光客が激減したように、自然災害が、いつ何時、何処に起きるか分からないし・・・。

ある経営コンサルタントは言う。
「起業しても10年以内に95%が廃業する」
「30年なら99%消滅」
・・・とか、恐ろしい事を言う。

立場は違うが、私の経営するひとつの会社も、もうすぐ31年目を迎える。
振り返れば、大学生の時から、社会人にならず、そのまま起業したわけだから、無鉄砲だったな・・・と振り返る(汗)。
当時は、領収書も請求書の書き方も、よく分からなかったような気がする(苦笑)。

でも、考えてみれば、なぜ、会社が続けられたかという理由を探すと、「師匠がいなかった」事のような気がする。
要するに、ビジネスの方法を教えてくれる会社や、先輩に頼らず、自己流でやっていったという事。

それはそれで、失敗の連続で、当時は大変だったが、若さのせいか、それも今振り返れば楽しかったような気もする。
当時、出ていた自己啓発本らしきものは、読んでいたような記憶もあるが、大事なものは、他社にない「オリジナリティ」があれば、生き残れるという事を学んだ。

ライバルの大きな会社が、右を向けば、私は左を選択した。
真逆こそが、我が道なりと信じて。

そうすると、それが面白い、使ってみようか・・・という会社が現れる。
そして、成果を出して見せる。

そんな繰り返しだったような気がする。
そして今、思うのは、宿泊施設の経営者の方々に言いたいのは、セミナーを受講して、それをどのように消化するかという事。
同じテキストで、何百、何千の受講者に教えるのだから、そのまま実行したら、どこも同じビジネスモデルとなってしまう。
金太郎飴の如く、何処も同じような施設になってしまうという事なのだ。

私の知っている、超がつくほどの繁盛旅館は、まさに「オリジナリティ」の宝庫。
まさに、我が意を得たり。

G.W.の裏側で

2015 年 4 月 30 日 木曜日

さあ、いよいよ2015年のGW(ゴールデンウィーク)が始まった。

先日、早朝のテレビを偶然見ていたら、「GWをどう過ごすか」という質問を、リモコンの4色ボタンで視聴者にアンケートを募っていた。

結果は「外出する/旅行する」が19%程度で、「家でゴロゴロしている」が39%。
なんと「仕事をしている」が31%だった。

早朝のテレビだからこその結果かもしれないが、「外出する/旅行をする」が2割にも満たない事に少し驚き、意外と「仕事をしている」人が多いのも印象的だった。

この「仕事をしている」人たちの中に、わが愛する旅館の女将さんやスタッフさんも入っている。
当たり前だが、プライベートを犠牲にして、家族を犠牲にして、接客をしているわけだ。

私は、全国津々浦々、取材をしていると、たまに、フロントの中を行き来している小さなお子さんたちがいることに気が付く。
旅館経営者のご子息たちだ。
旅館の中に自宅がある場合は、よくお母さん(この場合、女将さん)に甘えたくて、事務所に顔を出すのだ。

お客さんの前では顔を出すなと教育されているせいで、ふだんはおとなしくしているが、私のような料理を黙々と写真を撮っている姿をみると、すぐにお客ではないな・・・と思い、「何しているの?」とすり寄ってくる。

女将さんが相手してくれないから、自分のところに来るのが分かっているが、それが健気で、かわいらしい。
その場合、私も、仕事に集中しながらも、お相手をさせていただく。
私も3人の子持ち。
自分の子供のように接する。

GWになると、私も取材には出かけない。
すると、あの子供たちはどうしているのだろうか?

GWは連日満室。
とても、子供の相手もできない女将さんが多い。
でも、その子供たちは我慢して、お母さんの帰りを待つ。
まあ、帰るころは、子供が寝ている時間だけど・・・。

GWの裏側で、旅館の裏側で、こんな事があることも少し知ってほしい。
旅館の滞在の楽しさの裏で、旅館のお子さんたちも頑張っているのだ。

温泉旅館の一部の“温泉”に対する考え方

2015 年 3 月 31 日 火曜日

先日、独立した子供たちが集まる機会があって、温泉旅行をすることになった。

今回は完全プライベートを目論み、仕事で付き合いのない宿を探す事になった。

 

まずは、行先を決めて、その温泉地の宿のホームページ(以下HP)次から次へと見に行く。

子供の一人が温泉好きで、今回は源泉かけ流しのところがいいという。

そこで、何はともあれ、HPは「温泉」から見ていくことになったわけだ。

 

しかし、いくつか見たところ、相変わらず、情報が薄い。

温泉そのものの情報が、泉質名しかないのだ。

「温泉」のコンテンツなら、最低でも泉質の解説や、温泉分析表が欲しい。

その温泉地の数軒のHPの「温泉」のコンテンツには大浴場などの「お風呂」の画像があるだけだった。

 

やはり、「温泉」と「お風呂」は別に解説が欲しい。

特に温泉好きな人間にとっては・・・。

 

しかたなく、ある宿をねらい定めて電話で問い合わせてみる。

温泉はかけ流しか、循環しているのか。

すると、「あなたは何者か」とスタッフが私に聞いてくる。

「単に、温泉好きな者です」と答えても信用されていない様子。

スタッフは、しぶしぶ、循環していると答えた。

 

全然変わっていない。

数年前もそうだった。

温泉ソムリエの取得者が急激に増えようとも、一般の温泉ファンが知識を蓄えている時代でも、いまだにこのような温泉旅館があることに残念な気持ちを覚える。

ちなみに、その宿のじゃらんnetのページを見ると、「源泉かけ流し」になっていた!(驚)

 

私は、言っておくが、できれば源泉100%かけ流しがいいと思っているが、温泉だけが目的ではない場合、絶対条件ではない。

大型旅館であれば、なかには入浴前に掛け湯もしないマナーを守らない客も少なからずいるので、循環風呂の方が衛生的でいいとさえ思っている。

記念日旅行などは、どちらかと言えば高級なイメージの宿がいい。

夏などはリゾートっぽい宿も好きだ。

 

要するに、私は情報を正確に出している旅館を信頼している。

循環してようが、加水してようが、関係ない。

旅館には、料理や、お部屋、インテリア、庭園、ロケーションなど評価するポイントは多い。

温泉だけ見れば、湯治場の宿に行けばいいのだ。

 

ちなみに、わが運営する「貸切温泉どっとこむ」は、温泉の情報を明確にしている。

循環だろうが、かけ流しだろうが、すべて公開している。

つまり、弊社サイトに参加している宿経営者が「情報公開」という理念に理解している証拠でもある。

その点で言うと、私は「貸切温泉どっとこむ」の取材を受けてくれた宿には、リスペクトの思いが強い。

 

しかし、先ほどの宿の話は、昔から湯治場で有名な温泉地だった。

湯が枯れたのであろうか、湧出量が減ったのであろうか、分からないが、現在はかけ流しするほどの湯量はないようだ。

それをひた隠しにしたいのだろうか。

 

「温泉」を売りにしている宿が、「温泉」を偽っていたら、それは罪深い。

でも、利用者(お客)は、それは「宿の生活のため」だから仕方ないと、許してくれるだろうか。

宿泊施設HPにWebデザイナー不要論?

2014 年 10 月 31 日 金曜日

「貸切温泉どっとこむ」がスタートしたのが2000年。

今では想像がつかないかもしれないが、その頃の温泉旅館のHPは、あるかないかの状態。

あっても、手作り感満載のアットホームなHPでした。

 

時代が推移して、2014年。

この間に、Webデザイナーという職業が生まれ、宿のHPも画像をきれいに取りこみ、加工して、レイアウトも抜群に美しくなった。

美しさだけでなく、分かりやすさも重要視されるようになり、ここ10年で大きく進化したことは間違いない。

 

しかし、ここにきて、最近面白いHPを見かけなくなった。

なぜか、同じようなデザインレイアウトのHPばかりが目立つようになった。

各種Webセミナーが数多く開催される中、金太郎飴的になってしまったのであろうか。

 

そんな中、私はここ数年、デザインよりも、いかに宿泊施設HPに、有効なアクセスを増やすかを考えてきた。

我が社が作るHPは、私の数多い旅行体験、宿泊体験により、“旅人”目線が、ひとつの売りになっていた。

そこで、最終的に考え付いたのが、「コンテンツを重要視」するという事。

 

ここでいうコンテンツとは、当然のように宿HPに組み入れるものだが、料理、施設、客室、温泉・・・などのメインコンテンツではなく、その宿のキャラクターというか、独自性を浮き彫りにさせるためのコンテンツという意味。

それは、歴史であったり、環境であったり、観光ガイドであったり、様々だ。

 

それを、HPのコンテンツの枠組みを大きく超えるぐらいのものを作れば、大いに注目されるだろうと考えたわけ。

実際、ここ最近、私が手掛けたHPの中で、宿HPのTOPページのアクセス数より、コンテンツのアクセス数が5倍以上カウントされる事も珍しくなくなった。

それが、吸引力となり、最終的に宿HPのアクセス増につながり、予約増にも貢献していくという流れだ。

 

毎週のようにスクープ記事を宣伝する週刊誌、これでもかと新ドラマを告知するテレビ番組の如く、目新しいコンテンツが、結果的に宿の公式HPに繋がっていくという考え方なのだ。

そして、今、私は、究極のインバウンド集客術を完成させようとしている。

特に、北米、ヨーロッパ圏の集客コンテンツをこの秋から作り始めている。

おかげ様で、ここ数年で一番の忙しさとなっている。

詳細をお知りになりたい方は、是非、温泉コムまでお問い合わせを・・・。

あ、このブログを番宣ならぬ、コン宣に使ってしまった(汗)。

温泉旅館の料理

2014 年 3 月 31 日 月曜日

海辺の料理自慢の宿に泊まった。

海の幸満載の献立は、見た目にも豪華で、しかも新鮮だから間違いなく美味しい。

それを見た時、私は、ふと同じ価格帯の同温泉地の別の旅館の料理だったら、どうだろうと考えてみた。

 

私のような仕事をしていると、作業効率を上げるためだけではないが、できるだけ同じエリアに行ったら、複数の宿を取材することになる。

西日本の有名な海辺の温泉地の宿を、2軒まわった時の話だ。

2日目の宿は、前泊した宿とお造りの魚の種類も同じで、その他の地元の料理とされる献立も、ほとんどが似たようなものだった。

夕食の撮影が終わった後、食事の時間となったが、私は箸が進まなかった。

理由は、上記の通りで、いくら美味しいものでも、2日連続はきつい。

それを見ていた宿の女将さんは心配して、私に「お口に合いませんか?」と聞いてきたが、もちろんそんなことはない。

単に「飽きていた」だけだった。

 

この海辺の宿に限らず、地元に根を生やす温泉旅館には、定番とされる献立が存在する。

大部分のお客もそれを食しにやってくる。

しかし、そこの温泉地に行きたいけど、料理が自分に合わない・・・という人もいるのは確かなのだ。

旅館の料理は、いわゆるコース料理みたいなもの。

それも、月ごとに、あらかじめ決められた料理を出すのが通例となっている。

だから、旅行中に同じ温泉地で宿を変えるのは、私はお勧めしていない。

同じ料理が出る確率が高いからだ。

 

連泊の方には、飽きないように献立を工夫して、苦労しているのが料理長。

そして、予約の際に、あらかじめ苦手な食材を聞く宿も増えてきた。

しかし、あれもこれもダメと、ちゃんと食材を言える人がどれだけいるだろうか?

ここも難しい問題である。

嫌いではないが、好きでもない。どちらかといえばあまり食べない。

そんな料理が出てきたら、どうなるだろう。

 

高級なフレンチレストランなら、コースも選べ、さらにメインディッシュも選べる。

最近では、ランチタイムのイタリアンレストランでも、2000円台で、パスタの種類と、魚か肉の料理を選択できる。

パートナーや友人と行くなら、シェアしながら食べる楽しみも出てくる。

 

今や、日本人の「お・も・て・な・し」は、世界に称賛される文化に認識されつつある。

これからの温泉旅館の「おもてなし」は、もう少し「食」にスポットを当てるべき時代がきたように思える。

ボリュームたっぷりの料理や、地元食材満載の料理もいいが、その先のサービスである。

せめて、メインの料理をチョイスできるようになったら、格段にその宿のステータスは上がるだろう。

それには、マンパワーの問題やコストの問題も解決しなければならない。

でも、銀行に借金して、豪華な改装を施すよりも、お安い投資とも考えることができないだろうか?

 

今、コンビニは、美味しい弁当を開発して、弁当専門店から顧客を奪い、種類豊富なスイーツや、香り豊かなコーヒーを提供して、ケーキ専門店やカフェから客を呼び寄せている。

数年前、供給過剰と言われてきたコンビニが、最近調子がいい。

コンビニで扱う「商品力」を強くして、新たに攻勢を仕掛けているからだ。

同じように、温泉旅館も、「料理」という「商品力」を強くしていくことは、未来の確実な投資であることは間違いないはずだ。

「差別化」の実践

2014 年 1 月 29 日 水曜日

2014年の景気予想は、経済評論家の間で真っ二つに分かれている。

このまま、アベノミクス効果で、株価上昇気運と比例して好調が続く見方と、消費税アップによって失速するという見方だ。

もちろん、私としては前者の方を望んでいるが、こればかりはどうなるか分からない。

 

しかし、世の中には、景気の動向に関係なく、好調を維持している会社が数多く存在する。

そういった強い会社には、他社には無い「個性」を持っているところが多い。

つまり、「差別化」がされているという事なのだ。

 

旅館ホテル業界で考えてみる。

大手予約サイトを見ると、数多くの宿泊プランで売り出しているが、どれもどこかで見たようなものばっかり。

料理の献立を前面に出すものから、特典を付けるものなど、似たり寄ったりだ。

要するに、とんがったものがないのだ。

 

日本人は、おとなしい気質のせいか、あまり突出したもの、常識外のものを遠慮する節がある。

すぐに無難な安全策を選択する。

旅館ホテルの経営者向けの集客セミナーに参加した社長さんらに聞くと、講師から「他にはない個性を創出しよう」「差別化を図ろう」と教えられるが、実際、宿に帰って実行しようとすると、すぐに結果が出ないと諦めてしまう。

もしくは、周囲の反対を受けて、とん挫する事もあるという。

結果、今まで通りのやり方に戻ってしまう。

これでは、いつまで経っても、前に進まない。

 

絶景に建つロケーション、豊富な湯量と抜群の泉質の温泉・・・など、元々「個性」を持っている宿はその点、恵まれている。

そこに、もうひとつの、2つ目の「個性」を強くすれば、本当に強い宿ができあがる。

 

しかし、大多数の宿が、その恵まれた「個性」がないから苦労している。

だからこそ、経営者には、「差別化」を強く推し進める、強い気持ちが必要なのだ。

 

地方には、交通アクセスが悪くても、全国から人が集まってくる繁盛店がいくつかある。

福井県の山間部、坂井市にある、「竹田の油揚げ 谷口屋」。

その巨大で、独特の食感を持つ油揚げを求めて、駐車場は、他県のナンバーばかり。

滋賀県長浜市の「つるやパン」は、名物おばあちゃんが考案した「サラダパン」が大人気。

コッペパンに、細かく刻んだ“たくあん”とマヨネーズの絶妙な味わいが異次元の味わい。

群馬県桐生市の「ふる川」では、超幅広の“ひもかわ(うどん)”を食べに、店先は常に行列を作っている。ここでは、うどんを一本二本と数えるのではなく、一枚二枚と数えるらしい。

 

しかし、これらのお店には、奇をてらっただけではない、その商品開発までの「ストーリー」に、客が心を動かされ、ファンになっていく。

そして、商品だけでなく、そこでお店を切り盛りする人たちにも、心を奪われていく。

それが、リピーター客となり、固定客となる。

 

客は、モノだけでない、ココロがあるものを求めている。

感動があるものを、欲している。

圧倒的な「差別化」の中には、必ず「ストーリー」が内包されているものだ。

それを顧客に発信できれば、強い会社、超が付くほどの人気旅館ホテルが生まれるのだ。

宿泊料金の市場価格

2013 年 10 月 31 日 木曜日

最近、ヤフオクを始めてみた。

皆さんご存知の、インターネット上でオークションに参加できるシステムだ。

前から興味があったが、タイミングを逸し、今頃になってチャレンジした。

 

最初は、出品から。

周りから、「新規」アカウントは信用されないから、売れませんよと揶揄された。

実際そうだった。

 

そこは、負けず嫌いの私。

逆に、「新規」を売り物にして、誠実さをアピールした。

餅は餅屋で、キャッチコピーから、説明文、そして画像を考えて設置したら、すぐに売れるようになった。

私より、いい条件の商品を持っている出品者は数多かったが、あまりにも横柄な説明文、大ざっぱな解説、そして画像を出さない事で、いっこうに入札が増えない様子もたくさん見た。

(武士の商法ってやつね)

 

その後は、逆に、ある商品を落札してみた。

出品者と落札者を両方経験した事で、売る立場と買う立場の心理がよく分かり、改めて勉強になった。

そこには、間違いなく「商売の原点」が存在した。

 

そんなある日、ある旅館さんから、「最近、お客さんの予約が増えていない」と泣きの連絡が入る。

要は、週末は客が入るけど、平日が散々という状況。

どこにでも、よくある事だが・・・。

 

しかし、ヤフオクをやってみると、そこには如実に、「マーケットの原理」が存在する。

つまり、売り手市場か、買い手市場なのかという事だ。

週末のヤフオクは、閲覧者が多く、出品すると入札金額もうなぎ上り。

平日は、閲覧者が少なく、ゆったりとした入札の動きで、思ったほど値が上がらない。

 

同じく、宿側にとって、週末は売り手市場。

週末の割り増し料金を付けても、満室になる。

ところが、平日は宿側からすれば、完全な買い手市場。

いくら特典をつけても、値引きをしても、満室にはしにくい。

 

考えてみれば、シティホテルなどは、宿泊料金表があってないようなイメージ。

日によって、料金が目まぐるしく変わる。

 

逆に、温泉旅館は、「宿泊プラン」という売り方で、いかにたくさん予約を取ろうと考えている。

しかし、実情は、平日の空室は埋まっていない。

 

当たり前といえば、当たり前。

平日に休みが取れる人は少なく、しかも平日は、一週間7日間のうち6日もあるのだから当たり前。

 

だからこそ、オークションの原理を少し採用してもいいだろうと思う。

損益を1日単位でみるのではなく、1年単位でみる。

まあ、通常、決算書は1年ごとだから、この考えは的を射ている。

 

そこで、重要なのは、宿泊料金表。

実際、最近の旅館のホームページを見ると、これが掲載されていない場合が多い。

私は、これが一番重要だと思う。

 

標準料金という目安が無ければ、いかに「お得感」を出している宿泊プランでも、お客には本当の意味での「お得感」は残念ながら伝わってこない。

クルマを購入する際、注文書にサインするのは、結局、標準小売価格からどれだけ値引きしてくれてかによって決める・・・にも似ている。

つまり、「行く気はなかったけれど、温泉には入りたかったから、この料金なら泊まってみるか」・・・という心理を作りだすことが、大事なのだ。

 

もちろん、平日でも紅葉の時期など、少し高めの設定でもいいし、雪のない初冬の頃は、思い切って割安にするなどの変化を付けるということ。

 

しょせん、旅行することは、生活必需ではないと、働くのが好きな日本人のほとんどは思っている。

だからこそ、「今ならこんなに安いから」という、(旅行する)「言い訳」をお客に教えてあげるのも必要なのだ。

 

ここで、気を付けなければならないのは、宿のブランドイメージ。

安易に安くしているというイメージは、客に人気が無いとも、思われてしまう。

だからこそ、ホームページ上で、「当館は、季節ごと、月ごと、日にちごとに宿泊料金が変わります。あらかじめご理解のうえ、ご予約してください」とすれば、全然、受け取られ方が違ってくる。

 

ある旅館のオーナーが言っていた事を思い出した。

週末は常連客が多い。そしてお正月は、例年同じお客さんが泊まる・・・と。

これは、新規のお客が泊まりたくても泊まれない状況を作っているという事。

週末やお正月は、割り増し料金があっても、それでも、予約が多いという事は、もっと値上げをしてもいいという「天の声」。

週末は3万円ですが、今週の平日は1万2000円です・・・なんて事でもいい。

「そうしたら、常連のお客に怒られる」という経営者も多い。

私の考えは、繁忙期のお馴染み客は、宿にとっての優良顧客ではない。

馴染みだからという「利権」を使っての、予約の「独占者」に過ぎない。

それと、宿がつぶれても、常連客は何も手助けなんてしてくれません。

しょせんは赤の他人なんです(きっぱり)。

 

週末に新規客が増えて、平日に常連の連泊客が多い。

これって、ある意味、宿にとって理想形かもしれない。

それを目指しましょうよ。私の愛する温泉旅館たち。

本当の理想は、平日も週末も同料金で、いつも満室というのがそうでしょうけど・・・。