レコード盤的・やど批評 第1回「たてしな藍」(長野県)2017年4月、5月訪問

ちょっと、タイトルを付けてみた。

私は、ネットに関する仕事をしているが、根は、ザ・ビートルズがデビューした1962年生まれの、アナログレコード世代。学生時代は、音楽はCDではなく、アナログ・レコードを聴いていた。

そこで、そのアナログ・レコード盤のように、表と言われる「A面」と裏面と呼ばれた「B面」の2つの面から、宿を語っていこうという事で、この「レコード盤的」というタイトルにした。

 

【A面】(基本情報・設備など)

言わずと知れた、長野県の高級別荘地に佇む、蓼科高原の温泉宿。

クルマでアクセスすれば、中央道・諏訪ICが近い。

風光明媚な諏訪湖から、一気に高原へ上り、標高1000mあたりにこの宿はある。

だから、空気も澄んでいるし、美味しい。

小鳥のさえずりや、風で木々の葉っぱがこすりあう音も心地いい。

男女別大浴場には、露天風呂も当然の如くある。

他に、貸切露天風呂も備え、最近では、豪華な露天風呂付き客室が人気だという。

すべての客室に、藍染めの座布団カバー、手ぬぐい、掛布団カバー、シーツ・・・など、手作りの設えが揃っている。

藍染めも、予約すれば、自ら体験できる事もこの宿の魅力のひとつ。

さて、この宿の一番の楽しみは、やはり料理。

4月に訪れた時は、信州の山菜が、所狭しと膳に並んだ。

まさに「旬」を充分に味わうことができた。

朝食も手を抜かない。

お客は、満足してこの宿を去り、そしてリピーター客として帰ってくる。

素材を活かす、日本料理、懐石料理の王道を行く宿と言えるだろう。

 

【B面】(コンセプト・その他)

宿の周辺は、八ヶ岳連峰をはじめ、南アルプス、遠くには、中央アルプス、北アルプスまで見渡せる、絶景ロケーションの宿でもある。

天気に恵まれれば、富士山も八ヶ岳の右手に眺めることができる。

日本一の高原ドライブコースと呼ばれる「ビーナスライン」も、この宿が入口みたいなものだ。

蓼科高原、女神湖、白樺湖、車山高原、霧ヶ峰、八島ヶ原湿原、美ヶ原高原・・・と、標高2000mを超えるスポットもある。

最近では、ネットやテレビCMなどで話題となった、御射鹿池(みしゃがいけ)、白駒池なども人気だ。

これだけ、周辺にニッポンの自然の見どころが揃っているところも、そうないだろう。

「A面」で、この宿は高級別荘地にあると書いたが、実を言うと、近くの別荘オーナーが、宿泊客ということも珍しくないという。

東京から出てきて、いざ自分の別荘に来たはいいけれど、空気の入れ替えから、掃除など、管理人を置かない場合は、「生活する」準備が大変だという。

そこで、1泊目はこの宿に泊まり、居心地がいいものだから2泊目もこの宿に泊まり、料理も美味しいので3泊してしまい、結果、自分の別荘の掃除をするために、「たてしな藍」に泊まったという客も数多いとの事。

それを知っているスマートな客は、この宿を自分の別荘のように利用する。

それほど、自然で、さりげない接客が、この宿の人気を支えている。

ここは、知る人ぞ知る「大人の宿」なのだ。

たてしな藍 / 長野県・横谷峡

新ジャンル「お風呂リビング」とは?

温泉宿に「露天風呂付き客室」が誕生して、今や定番化した。

高級旅館には、おなじみの、そして当たり前の施設となった。

 

その客室に専用の露天風呂が備わったのは、鹿児島県・妙見温泉の「忘れの里 雅叙苑」が発祥とされる。

今から35年前、昭和53年(1978年)のことだ。

この年は、当時日本一の高層ビル、サンシャイン60が東京・池袋に完成、キャンディーズが解散、サザンオールスターズがデビュー、NHKで宮崎駿監督の「未来少年コナン」の放送開始、そしてプロ野球では、江川卓のいわゆる「空白の一日」のあった年であった。

 

ご存知の通り、この「露天風呂付き客室」というスタイルが、その後、旅館業界に大きな影響を及ぼす事になったのは言うまでもない。

その“発明者”が、田島建夫さん、昭和20年生まれ。

古くからある湯治旅館の跡取りだった人。

人と同じ事をする事が“苦手”な、感性の塊みたいな方でもある。

 

田島社長が発明したのは「露天風呂付き客室」だけではない。

茅葺き屋根の古民家を移築して客室にしたり、大きな岩をくり抜いて湯舟にしたり・・・など、最近、田舎(ローカル)を標榜する温泉旅館には、当たり前の施設、インフラを初めて具現化したのが彼だった。

 

当然のように、マスコミに取り上げられ、同業者の視察が相次いだ。

そして、全国に「雅叙苑もどき」の宿が次々に誕生していった。

 

実際、私が「貸切温泉どっとこむ」の取材の打診で宿を訪れる際、少し宿の様子を見学させてもらうと、すぐにどこの宿の影響を受けたかが分かる。

その宿の主人が、当サイトに「雅叙苑」が掲載されている事を知ると、すかさず取材を断るという事が多々あった。

私に「マネをした」と書かれるのが怖いのだろうか。

 

さて、現在の「雅叙苑」は、どうなっているかというと、ここ10年である変化が起きている。

リニューアルと言っては簡単だが、それは単なる改装ではないような気がする。

 

せっかく作った露天風呂付き客室を、田島社長曰く「お風呂リビング」と呼ばれるスタイルに、生まれ変わらせているのだ。

湯舟はそのままなのだが、洗い場周辺が温泉パイプを埋め込んで床暖房。

露天風呂テラスの空間に屋根を付け、壁に窓を配置し、・・・つまりは、屋根のない客室露天風呂スペースも、客室にしてしまったのだ。

 

その空間には、エアコンもある。

そしてテーブルやソファーもある。

つまり・・・リビングの真ん中にお風呂があるというイメージなのだ。

 

そんな、カリスマ的温泉宿で、わが「貸切温泉どっとこむ」主催の「温泉ソムリエ認定セミナー」を2013年6月29日(土)~30日(日)で開催することになった。

温泉ソムリエは、温泉分析表の見方から、温泉そのものを理解し、より一層温泉浴の楽しさを体感できる資格。

その認定セミナーの後は、夕食会、そして翌日には、世界に名だたるオンリーワンリゾート「天空の森」にて、田島社長のトークイベントも行う予定。

詳しくは、「忘れの里 雅叙苑」「天空の森」の公式HPを参照してください。

ちなみに、宿泊場所は、この2軒だけでなく、リーズナブルな湯治旅館「田島本館」も選べます。

 

伝統的な湯治旅館「田島本館」から、薩摩の昔をテーマにした「忘れの里 雅叙苑」。

そして世界中のVIPが訪れる「天空の森」。

この3つの魅力を同時に触れながらの温泉ソムリエ認定セミナー、・・・絶対に面白いです!

温泉ソムリエ認定セミナー@琢琇

2011年11月23日、勤労感謝の日に、宮城県・鳴子温泉郷の中山平温泉の「名湯秘湯うなぎ湯の宿 琢琇(たくひで)」にて、温泉ソムリエ認定セミナーを行った。
我が「貸切温泉どっとこむ」(温泉コム株式会社)企画のイベントだったが、お陰様で、大盛況で幕を閉じた。

そもそも、このイベントを思い立ったのは、私が昨年、Twitterが縁で、温泉ソムリエ家元の遠間和広君と、なんと25年ぶりぐらいに再会を果たした事に始まる。
お互いの仕事の話をしているうちに、温泉ソムリエのテキストの中で「美肌の湯4大条件」を紹介していると聞き、それは鳴子の「琢琇」なら、すべて揃っている泉質だよね・・・という事になり、さらには、私が「琢琇」の記事を「貸切温泉どっとこむ」で書き、公式HPも我が社が運営している事もあり、トントン拍子に実現へと向かった。

私がまだ20代前半で、東京・渋谷でオフィスを構えて間もない頃、当時学生だった遠間君が、弊社社員と友人だった事もあり、ちょくちょく顔を出していた事が、そもそも、私と彼の最初の出会い。
その頃の私は、販売促進系の広告代理店を経営していた。
それが、25年後に、仕事の中身は違えども、温泉をテーマに仕事をしているところに、運命的なものを感じたのも確か。

私は、20歳前後から温泉に傾倒し、その後、仕事として温泉宿の記事などを書くうちに、いつの間にか温泉そのものに詳しくなり、さらに自然と温泉分析表も読めるようになり、そのデータだけで、どんな特徴の温泉かある程度分かるようになった。
それと同時に、温泉もいっそう好きになっていったような気もする。

遠間君が行っている、温泉ソムリエのセミナーの中身は、簡単に紹介すると、温泉の条件から始まり、種類と特徴、入浴法、そして、最後に温泉分析表の読み方まで教えてくれる。
ざっと3時間ほどの授業だが、三部構成にして、分かりやすく、丁寧に教えている姿が印象的だった。

普段、このセミナーは東京など中心に、大都市圏で行っているのが通例らしいが、温泉旅館、しかも東北地区で実施するのは、初めてという事もあり、さらに宮城県鳴子温泉郷といった、お世辞にも交通の便が良くない立地で、よくぞここまで受講者が集まってくれたと少々驚いている。

それも、遠間君が2002年から立ち上げた温泉ソムリエが、新潟県妙高赤倉温泉から全国へ知名度を上げ、取材者やライターなどを数多く輩出し、最近ではタレントや女優まで認定者がいるという人気の高さも大きく貢献しているだろう。

「貸切温泉どっとこむ」や「琢琇」の公式HPなどからの告知も行ったが、受講者がやはり「温泉が好き」という事が、今回のセミナーの成功の背景となっている。
温泉が好きだから、温泉の事をもっとよく知りたい・・・こんな考えを持っている人たちが、数多くいるという事に、改めて私自身、素直に喜びを感じた。

しかし、このイベントを、実現に向けて、大きく私を動かしたのは、皆さんご存知の通り、3月11日の東日本大震災。
この「琢琇」も、建物のあちこちに損傷を受け、名物の混浴露天風呂は湯舟自体にヒビが入り、崖の上の立地という事もあり、今後は壊す方向で考えているとの事。
さらに、数本ある自家源泉の一本が、震災を機にお湯が出なくなったのも、大きな痛手だった。

私自身、福島出身という事もあり、震災後、温泉宿を助けるための行動をしてきたつもりだが、昨年から企画してきたこの温泉ソムリエ認定セミナーの目的としては、東北復興の願いも加わった形となった。

私は「琢琇」の湯を常々、「奇跡の湯」と称している。
前述の通り、美肌の湯の4大条件である・・・
① ツルツルスベスベ肌になる炭酸水素塩泉
② 肌のハリとシワに効果的な硫酸塩泉
③ 美白効果の硫黄泉
④ 肌の角質を溶かす(弱)アルカリ性の温泉
・・・がすべて揃っている泉質であるから。

「琢琇」の主要な源泉の泉質名は、「含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉」。
pHも9を超える。
もちろん、源泉100%かけ流し方式。
初めての人は、トロトロのあんかけのような湯の肌触りに驚くに違いない。
この極上の湯を、この時期に、この場所で、温泉ソムリエセミナーを通して、大きくPRできた意義は大きい。
何よりも、「琢琇」の女将、佐々木久子さんが、大変喜んでくれた事が、こちらとしても嬉しい限り。
ここ鳴子で誕生した温泉ソムリエの皆さんが、これを機に「琢琇」の温泉の素晴らしさを多方面で紹介していただき、そして東北、いや全国の温泉の素晴らしさを、自らの方法で知らしめていただくことを願うばかりである。

温泉ソムリエ認定セミナーat琢琇

名湯秘湯うなぎ湯の宿 琢琇/宮城県・鳴子温泉郷・中山平温泉