温泉旅館への取材スタイル

私は「貸切温泉どっとこむ」という、いわゆるインターネットサイトで、全国の温泉旅館の取材をし、記事を書いている。
サイト誕生は、ミレニアムの2000年になるが、現在、70%強の記事がそうであるように、大容量ページに再編集してからは、4年の年月が経った。

当初は、趣味で書いていたが、いつの間にかそれが仕事になってしまった。
人はそれを羨ましいとよく言うが、当の本人は、それほど実感はない。
いくつかの宿の経営者からの進言もあり、ビジネスにしたわけであるが、今思えば、必然だった様な気もする。
趣味を仕事にするな・・・との格言もあるが、趣味を仕事にした瞬間、それは趣味ではなくなる・・・という意味からなのだろうか?
私は、困ったことに、趣味と仕事の境目が分からなくなってしまっている。
まあ、それはそれで幸せな事なのかもしれない。

話を戻すが、記事を大容量、すなわち、詳細にデータをまとめたのは、大きな理由がある。
特に温泉情報のデータ。
泉質名は書いてあっても、源泉がどのように使われているか(かけ流し、併用、循環、運び湯など)、表記されてない場合が多い。
浴槽の温泉の入替頻度などは、まったく書いていない。

温泉評論家、温泉ライターなどと称する人は、記事を出版の場合、字数の問題もあり、データを簡潔化するのは、仕方ないが、ウェブサイトでも同じような、あっさりデータはいかがなものかと思う。
つまり、本当に、真面目に取材しているのか?と問い詰めたくなる。

私には、子供が3人いるが、小さい頃、アトピー性皮膚炎で悩まされ、源泉かけ流しの温泉に、できるだけ連れて行こうとした。
私が20代の頃は、インターネットもなかったから、温泉評論家やライターさんが書く記事をあてにして、宿選びをしたものだ。

しかし、温泉の情報は、よく間違っていた。
源泉100%かけ流しと紹介している宿が、塩素消毒しての循環ろ過装置を導入していた場合が多かった。
そんな宿に、その評論家先生が取材にきた時の事を、宿のご主人に聞くと、驚くべき話を耳にする。
取材というのも、ほんの数時間。
あとは、お酒を飲んで、料理食べて、少し話して、翌日、自分の書いた本を売店に卸して帰るだけ。

私は宿泊取材の場合、最低でも12時間は活動するけど・・・。
要するに、私は少なくとも、いい加減な取材はしない。
サイトを運営する以上、徹底した、正確な記事を、自分だけは書いていこうと誓った。

同時に、取材対象者である温泉旅館に、情報公開を求めた。
結果、いいかげんな宿は淘汰され、良心のある宿だけが「貸切温泉どっとこむ」に残った。

現在、私は、取材だけでなく、宿の公式ホームページ(HP)制作の仕事がよく来るようになった。
私は、宿側と打ち合わせをしない、私にお任せというスタイルにも関わらず。
これも、旅館に出入りしている、ウェブコンサルタント会社のレベルの低さ。
いかに画像をきれいに配置して、見た目重視のサイトばかり。
同じプラットフォームに、違う画像を載せて、コストダウンも図っているが、私には、どこも同じ金太郎飴のHPにしか見えない。

私は、取材者としてではなく、お客として3000軒の宿に泊まった経験がある。
そして、ここ10年は、取材者として、宿を見てきた。
同時に、25年以上、大手メーカー向けの販促プロモーションの企画書を書いてきたキャリアもある。
つまり、客目線と、マーケティング目線と、同時に宿を見られるのだ。

よくある宿の公式HPには、何かが足りない。
だから、予約サイトに蹂躙されるのだ。
ところで、宿の公式HPを作るウェブデザイナーは、何軒、温泉旅館に泊まった事があるのか?
見せかけだけの、ウェブサイトも淘汰される時代になったのかもしれない。

私的・ネットのクチコミ論

新年早々2012年1月に入って、人気サイト「食べログ」のやらせクチコミについて、新聞やテレビをはじめ各マスコミが大々的に報道するのを見た。
私から言わせると、「今頃なぜ?」という印象。

「食べログ」に限らず、人気クチコミサイトには、やらせクチコミは容易に投稿できる仕組みとなっている。
アカウントを取得するだけだから、そこに正確性、信ぴょう性を求めるのは、物理的にもおかしい話。

ネットマーケティングと称して、やらせクチコミをビジネスとして実施していたのは、何も飲食店ばかりではない。
日本を代表する大手企業も、やっていた時代があった。
今から10数年前、インターネット黎明期の頃。
人々は、PC関連の商品や化粧品など、実際に使ってみないと分からないものは、様々なネット掲示板を閲覧して、購入する手がかりを探っていた。
大手メーカーもそれに着目し、自分の商品に有利なクチコミを流布させるために、広告代理店に依頼し、いわゆるやらせクチコミをその掲示板に投稿していたのも、事実あった。

ネットのない時代、ネットが普及する直前の頃は、大学生であれば、部員のたくさん束ねているリーダー的存在や、女子高校生であれば、人気ファッション雑誌の読者モデルなどに、新商品を提供し、それを周辺の友人などにPRするように働きかけた。
いわゆるカリスマ性のある人、その世代に影響力のある人に、トレンドを作ってもらおうという考えが、新しいマーケティングの手法として使われていた。

しかし、インターネットが普及するにつれ、トレンドを流布させるインフラが、大きく変わった。
それがネットのクチコミであり、それは驚くべきスピードで情報が広がっていくことに当時は誰もが驚いていた。

今回のやらせクチコミ投稿報道は、私から言わせれば、大きな事件のない時の「暇ネタ」みたいなもので、業界の人間であれば、暗黙の了解的なものだったようにも思える。
私の現在の仕事に関連すれば、宿泊施設に対しても、やらせクチコミの営業をする会社が存在していることは知っていた。

テレビで、大手の宿泊予約サイトでは、実際に予約して宿泊しないとクチコミが投稿できないなどと、解説している事情通?を見かけた。
笑った。
そんなことはない。
じゃらんnetでも、やらせクチコミの投稿など簡単。
宿泊施設もグルになれば、何でもできてしまうからだ。

こんな報道がされる前から、ずっと前から、私は予約サイトなどの、温泉宿のクチコミは信じないほうが無難だと言ってきた。
理由のひとつはこうだ。
年に数回しか行かない、もしくは数年に1回しか行かない人たちの情報は、いわば素人の噂話。
宿の経営者の意図を知らずに、自分だけの今までの知識や経験だけ評論している。
しかも、「ウラ」を取らずに、限定口調で投稿する。

私の主宰している「貸切温泉どっとこむ」は、現在クチコミ情報の募集はしているが、それをそのまま自動的にはアップしていない。
主役はあくまでも、専門家の目で見る、宿の正確な情報であり、どこよりも詳しい宿泊レポートだと思っている。
そのアシストには、とにかくたくさんの画像も用意してある。
それによって、自分の力で、「自分に合う宿」であるかどうか判断してほしいのだ。

それに私は、温泉宿が好きだ。
その宿泊レポートには、愛があると思ってほしい。
単なる大容量の情報だけではない。

今まで、正直に書きすぎて、温泉宿からお叱りを受けたことも多々ある。
特に温泉の使用状況などの情報。
そのまま、書いたら、載せなくてもいいと圧力をかけられた事も。
もちろん、私はそんな宿は載せなくてもいいと思っている。
人気宿に、そんな事が多いのが残念なことだが。

だからこそ「貸切温泉どっとこむ」に掲載している宿は、私の「徹底した情報公開」という取材方針に賛同していただいているところばかり。
しかし、そうでなくなった宿は、どんどん削除していく方針。
そんなサイトがある事を、ぜひ知っていただきたい。

「宿選び」と「貸切温泉どっとこむ」

温泉旅行に行こうと決めた時、あなたは何を頼りに「宿選び」をしますか?
現代は、インターネット全盛の時代。
2000年以前は、ガイドブックなど書籍関連からの情報収集が主だったものが、ここ10年は、ネットがその主流となっている。
予約サイトも成熟期を迎え、幅広く宿をラインナップするものから、高級路線の宿だけを集めたもの、逆に大幅値引きを売り物にしているサイトも存在している。
それはいわゆる「宿泊プラン」というものをリリースして、消費者に分かりやすく訴えようとしている。
特典を付けたり、値引きをしてお得感を出してアピールするのだ。

そして、消費者は、「宿選び」から、「宿泊プラン選び」になってしまっている事に気付かない?
まあ、これは極論だが、この時世、宿の「格」や「質」で選ぶより、いかにお得に泊まれるかの「バリュー感」で宿選びをしてしまっている場合が多くなってきたと思う。
ビジネスホテルを予約するのと同じように、温泉宿を予約する傾向が感じられるのだ。
宿側もそれに倣い、営業会議を開いては「宿泊プラン」を考えるのだ。

しかし、それってどうなんだろう?
ふと疑問に思ってしまった。
私は個人的な話をすれば、30代前半までは、書籍関連で宿探しをしていた(ネットがなかったので)。
その頃は温泉評論家や温泉ライターの記事を参考に宿探しをしていたように思う。
そして私が30代後半にネットの時代が訪れ、膨大な情報が即座に受け取れるようになった。
その頃(2000年)に「貸切温泉どっとこむ」もスタートした。

予約サイトのいいところは、料金や、エリアなどで条件別検索ができるところ。
ハード情報も、クチコミ情報もあるので、ある程度目安にしやすい。
しかし、そこになぜか「血の通っていない」冷たさを感じるのは私だけであろうか。
宿の説明文を書いているのも、おおよそ宿の経営者か、営業担当者、もしくはサイト管理者側が、公式HPからコピーを拾うような形で、文章を羅列する。

温泉評論家の書いていた叙情的、もしくは専門的なコメントはそこにはない。
でも、ネット全盛の時代になって、彼ら評論家、ライターを生業としている人たちの書いた記事が「情報量の少なさ」を露呈する事にもなってしまった。
温泉や歴史、文化には詳しいけど、客室のインテリアや料理は語れず、またはマーケティングにはまったく知識がない。・・・とか。
実際、彼らの書く温泉ガイドは、それほどの売り上げを記録していない。
逆に、自分たちの宿を取り上げられたことで、宿側が強制的に(?)仕入れる事になり困っているという話もよく聞く。

そのどちらのいいところをカバーしようとして、私は2007年から「貸切温泉どっとこむ」を、一軒ごと地道に記事を改訂している。
自分でいうのもなんだが、温泉、歴史、文化から、宿泊プラン、そして経営者のエピソードまで網羅している、どこにもない、稀有な存在のサイトなのだ。
しかもネットだから、無料で、いつでも見られる。
宿がリニューアルしたら、すぐに記事を書き改める事ができる。

しかし、その膨大な情報をまとめるのは、いかに大変なことかと改めて実感している。
そして、正直言えば、半分後悔もしている。
この努力が、皆さんに少しでも伝わればいいなと思っているのも確か。
それは温泉LOVE、温泉宿LOVEだからできる事。

こんな、コスト度外視で作っているサイトはどこにもないと自慢(?)できる。
そんな事をどこか心に留めていただき、これからも「貸切温泉どっとこむ」にお付き合い願えればこの上ない幸せなのです。
アナログとデジタルの融合したサイト、それが「貸切温泉どっとこむ」。
ぜひ、「宿選び」の参考資料にしていただきたい。
なにしろ、改訂した記事は、一軒の宿だけで一冊の本が作れるほどの「大容量」なのだから・・・。

■「貸切温泉どっとこむ」http://www.kashikiri-onsen.com/