‘温泉宿と旅行代理店の関係’ カテゴリーのアーカイブ

旅行代理店と温泉宿のネット広告戦略

2010 年 2 月 28 日 日曜日

ここ10年間のインターネット環境の成熟化に伴い、温泉宿の販促活動、集客のための広告戦略も、新しい選択肢が増えてきた。
一番ポピュラーなのは、スポンサードサーチ(Yahoo)、アドワーズ広告(Google)などの検索連動型広告、そして、興味関心連動型の広告のインタレストマッチ(Yahoo)、アドセンス広告(Google)などもある。

しかし、まだまだ、それらを利用している宿は少ない。
そのひとつの要因に、JTB、リクルート社(じゃらんネット)などの、いわゆる大手旅行代理店(エージェント)の存在がある。

いくつか方式はあるが、一般的には、エージェントに客室を提供して、代わりにその客室にお客を入れてもらうというシステムなのだ。
つまり、(これも簡単に書くと)JTBのリアル店舗に置かれているパンフレット、じゃらんネットに掲載されている情報によって、宿にお客を誘導するという事なのだ。

そのエージェントの営業トークのひとつに、「広告費の節約になります。」とある。
「温泉宿自ら広告をうたなくとも、代わりに集客してあげますよ。」・・・という意味なのだろうが、「これでホントにいいの?」と私は疑問に思う。

現在では、温泉宿のほとんどが、公式HPを持っている。
それで、温泉宿は「インターネットを導入した」「ITを導入した」と、安心しているようにも思える。
でも、実際は、HPを持つのは、基本中の基本。いわばIT化で言えば、5%にも満たない段階と断言したい。
残り95%が大事なのに、ほとんどの温泉宿が何もしていない事が、私は危機感を抱く。

それでも、ある温泉宿の経営者は、「じゃらんネットは、集客力がある」と語る。
実際、半分近くが、じゃらんネット経由で来ているという宿がある。
しかし、それには、ある「からくり」がある。

それは、「スポンサードサーチ」などのリスティング広告を、「宿の名前」をキーワード登録して、「じゃらんネット」に誘導している事だ。
実は、宿の公式HPのアクセス解析をしてみると、なんと90%以上は、「宿の名前」で検索して入ってくる。
つまり、それを理解しているからこそ、「宿の名前」で広告をうつのだ。

ヤフーなどで「宿の名前」で検索した画面に、上部と右側に、広告が掲載されている。
例えば、「○○旅館の予約は、△△(エージェントサイト)へ」の誘導告知がそうだ。

言い方を変えれば、「直接予約してくれるはずのお客が、エージェント経由で予約する」という事なのだ。

エージェント経由ということは、宿はエージェントに8~20%ほどの「手数料」を支払わなくてはならない。
これは売り上げの%なのだ。
純利益が少ない温泉宿とは反対に、このような高額の手数料を手にするエージェントは、まさにインターネットをフル活用しているようだ。
宿側にとっては、もともと収益構造が脆弱なうえに、このような多額な手数料を支払わなくてはならないのだから、その苦労は、ある程度想像できる。

今後、温泉宿は、もう少しインターネットに対して勉強すべきだ。
それは公式HPのSEO対策を強化しろという意味でない。
自分の宿のスペックをもう一度見渡して、それをいかにマッチングしそうな顧客候補にアピールするかを考えることだ。
インターネットに情報を出すということ(広告も含めて)は、実に有意義な事なのだ。

ある不動産屋の広告で、「いつまで家賃を払い続けるの?」「家賃をずっと払い続けても、家は自分のものにならないよ」「住宅ローンで家を買えば、自分のものになるよ」・・・と訴えるものをよく見る。

これを今回のテーマに当てはめると、「エージェントに集客を委託する事」は、「賃貸派」。
「自らネット広告を出してマッチングするお客を集客する事」は、「持ち家派」と、例えることもできよう。

「自らネット広告をうつ事」は、自らの宿のマーケティングデータを収集することもできる。その他、隠れていた魅力を掘り起こせるかもしれない。

温泉宿は、「エージェント信仰」主義を見直すべきだ。
その理由のひとつは、繰り返すが、かれらエージェントは、「宿の名前」でネット広告を掲載しているからだ。

これいいのか・・・旅行代理店の餌食になっている日本旅館

2009 年 11 月 26 日 木曜日

今日の産経新聞に次のような記事が載った。

「JTBが店舗の大幅削減を検討  旅行需要低迷で」

記事によると・・・旅行業最大手のJTBが国内店舗の大幅削減を検討していることが26日分かった。平成23年度中に全店舗の約2割に当たる200店舗程度を削減する可能性がある。一方で、コストの安いインターネットを通じた商品展開を強化する。景気低迷を背景に旅行業界も売り上げが激減しており、店頭販売からネット販売に軸足を移すことで、コストを大幅に削減する。
JTBは、グループ全体で、法人向けも含め国内に約940店舗を運営している。具体的な店舗閉鎖数は今後、具体的に詰めるが、不採算店舗を中心にリストラを実施する方向で検討している。閉鎖店の従業員の雇用は主に配置転換で維持する方針だが、削減店舗数の規模によっては、人員削減を進める可能性も高い。
一方で同社は、コストの安いネットによる販売展開を強化。現行で全取り扱高の7%程度を占めるネット販売の比率を。23年度には12%まで引き上げる計画だ。
・・・とある。

じゃらんネット、楽天トラベル、一休ドットコムなどに代表されるネットエージェントと呼ばれる21世紀型・旅行代理店が、どんどん顧客を獲得しているなか、JTB、近ツー、日旅などのリアル店舗を持つ代理店が、どこまで踏ん張れるか注目していたが、この不景気が後押ししたようだ。

もちろん、JTBもネットによる予約に力を入れているが、さらに資金をそこに集中しようとする考えなのだろう。
F1を撤退し、成長分野であるエコカー開発に人材と資金を注入したホンダと同じだ。

これにより、私がこよなく愛する日本旅館には、さらに向かい風が吹くことになるだろう。
ネット予約に力を入れるということは、そのアイテムのひとつ、「リスティング広告」を強化するという事でもある。
つまりこれは「検索連動型広告」。
ヤフーやグーグルなどで検索した場合、検索結果ページの上部と右側に関連するネット広告が表示される仕組みだ。

「草津温泉」「別府温泉」などのキーワード広告ならまだいい。
例えば、「草津温泉での旅館探しならJTBへ」・・・となり、JTBの掲載宿リストにとぶカタチならまだいい。
ところが、JTBは、「○○旅館の予約ならJTBへ」・・・と、旅館名の実名、つまり宿の商標を使って広告をうっているのだ。

これは今まで常連だったお客を横取りしかねない状況も容易に想像できる。
エージェント(旅行代理店)経由の予約には、ポイントが付く。
直接旅館に予約すれば、当たり前だがポイントが付かない。
客の立場からすれば、同じ料金ならポイントが付いた方がトクという考えから、エージェント経由の予約が最近増加傾向なのだ。

これにより、旅館の財務体質も弱体化する。
宿にも多少違いがあるが、じゃらんで8%、JTBで15~20%の手数料(売り上げに対する)を、旅館はエージェントに支払わなければならない。
ただでさえ、利益率の少ない産業にも関わらず、この高額な手数料は、全国の旅館ホテルの経営環境を悪化させている。

なぜ、私はこのリスティング広告に注目する理由はもうひとつ。
私はインターネット関連の会社である関係上、いくつかの旅館の公式ホームページを手がけることになった。
アクセス解析をしてみて驚いたのが、なんと【90%以上が宿名で検索】という事実!

つまり、エージェントが【宿名でリスティング広告をうつ】ということは、彼らにとっては理にかなっていると言う事。
宿側からすれば【直接予約をしてくれるお客を横取り】されているようなもの。
だから私はこれを【待ち伏せ広告】と呼んでいる。

JTBは、じゃらんネットと比べると、宿が払う手数料は一見高いように見えるが、JTBなどリアル店舗を運営してきたエージェントには、それなりの理由があった。
それはパンフレットの作成や、街興し的なイベントに協賛など、有形無形に温泉地に、観光地に貢献してきた。
しかし、じゃらんネットや楽天トラベルは、あまりそういう話は聞かない。
特にじゃらんネットを運営しているリクルート社は、情報誌じゃらんも発行している。
もちろん、こちらにも掲載料がかかる。
まさに、私には旅館業界の悲鳴が聞こえるのだ。

だからこそ、私の活動意義がある。
機会があれば、その活動の一環をご紹介させていただく予定だ。

今回は旅館側の目線で書かせてもらった。
私は旅館の経営者ではない。しかし、私は現在2つの会社を経営している。
私自身、20年以上会社を経営していて、この旅館業界の古くからある慣習的なものが、現在の旅館経営者を苦しめているような気がする。

今から10年ちょっと前までは、インターネットなど一部の人間しか知らなかった。
旅館を予約するとすれば、例えば最寄のJTBの店舗に行って、スタッフに相談しながら宿を選択して予約してもらう。そこで手数料が発生する。
街の賃貸の不動産屋さんと同じだ。
ところが、今は、宿探しでリアルの店舗に探しに行かなくなった。
ネットで探すようになった。
だから、ちょっと旅館よりインターネットに詳しいエージェントが、ネット広告を出した。
それを今度は、宿名でネット広告を出した。
結果、ネット予約のお客を取り込むことができた。
ところが、この流れ【お客を横取りされている事】をまったく知らない、理解できない旅館経営者が本当に多いという事が、私の一番の心配事なのである。