旅行代理店と温泉宿のネット広告戦略

ここ10年間のインターネット環境の成熟化に伴い、温泉宿の販促活動、集客のための広告戦略も、新しい選択肢が増えてきた。
一番ポピュラーなのは、スポンサードサーチ(Yahoo)、アドワーズ広告(Google)などの検索連動型広告、そして、興味関心連動型の広告のインタレストマッチ(Yahoo)、アドセンス広告(Google)などもある。

しかし、まだまだ、それらを利用している宿は少ない。
そのひとつの要因に、JTB、リクルート社(じゃらんネット)などの、いわゆる大手旅行代理店(エージェント)の存在がある。

いくつか方式はあるが、一般的には、エージェントに客室を提供して、代わりにその客室にお客を入れてもらうというシステムなのだ。
つまり、(これも簡単に書くと)JTBのリアル店舗に置かれているパンフレット、じゃらんネットに掲載されている情報によって、宿にお客を誘導するという事なのだ。

そのエージェントの営業トークのひとつに、「広告費の節約になります。」とある。
「温泉宿自ら広告をうたなくとも、代わりに集客してあげますよ。」・・・という意味なのだろうが、「これでホントにいいの?」と私は疑問に思う。

現在では、温泉宿のほとんどが、公式HPを持っている。
それで、温泉宿は「インターネットを導入した」「ITを導入した」と、安心しているようにも思える。
でも、実際は、HPを持つのは、基本中の基本。いわばIT化で言えば、5%にも満たない段階と断言したい。
残り95%が大事なのに、ほとんどの温泉宿が何もしていない事が、私は危機感を抱く。

それでも、ある温泉宿の経営者は、「じゃらんネットは、集客力がある」と語る。
実際、半分近くが、じゃらんネット経由で来ているという宿がある。
しかし、それには、ある「からくり」がある。

それは、「スポンサードサーチ」などのリスティング広告を、「宿の名前」をキーワード登録して、「じゃらんネット」に誘導している事だ。
実は、宿の公式HPのアクセス解析をしてみると、なんと90%以上は、「宿の名前」で検索して入ってくる。
つまり、それを理解しているからこそ、「宿の名前」で広告をうつのだ。

ヤフーなどで「宿の名前」で検索した画面に、上部と右側に、広告が掲載されている。
例えば、「○○旅館の予約は、△△(エージェントサイト)へ」の誘導告知がそうだ。

言い方を変えれば、「直接予約してくれるはずのお客が、エージェント経由で予約する」という事なのだ。

エージェント経由ということは、宿はエージェントに8~20%ほどの「手数料」を支払わなくてはならない。
これは売り上げの%なのだ。
純利益が少ない温泉宿とは反対に、このような高額の手数料を手にするエージェントは、まさにインターネットをフル活用しているようだ。
宿側にとっては、もともと収益構造が脆弱なうえに、このような多額な手数料を支払わなくてはならないのだから、その苦労は、ある程度想像できる。

今後、温泉宿は、もう少しインターネットに対して勉強すべきだ。
それは公式HPのSEO対策を強化しろという意味でない。
自分の宿のスペックをもう一度見渡して、それをいかにマッチングしそうな顧客候補にアピールするかを考えることだ。
インターネットに情報を出すということ(広告も含めて)は、実に有意義な事なのだ。

ある不動産屋の広告で、「いつまで家賃を払い続けるの?」「家賃をずっと払い続けても、家は自分のものにならないよ」「住宅ローンで家を買えば、自分のものになるよ」・・・と訴えるものをよく見る。

これを今回のテーマに当てはめると、「エージェントに集客を委託する事」は、「賃貸派」。
「自らネット広告を出してマッチングするお客を集客する事」は、「持ち家派」と、例えることもできよう。

「自らネット広告をうつ事」は、自らの宿のマーケティングデータを収集することもできる。その他、隠れていた魅力を掘り起こせるかもしれない。

温泉宿は、「エージェント信仰」主義を見直すべきだ。
その理由のひとつは、繰り返すが、かれらエージェントは、「宿の名前」でネット広告を掲載しているからだ。